特集vol.005 小倉勉×井原正巳 夢の対談レポート

この度「あすり~と先生.com」の講師として活躍いただいているサッカー日本代表U-21小倉勉コーチ(元日本代表コーチ)と現柏レイソルコーチ(元日本代表キャプテン)井原正巳氏との夢の対談を行いました。

サッカーとの出会いから、これからの後進の指導、そして子育てまで、様々な観点での対談を行いました。お二人の熱い対談をお楽しみください!

小倉勉×井原正巳 夢の対談レポート

お二人のサッカーを始めたきっかけを教えてください。

井原
僕の子どもの頃は今のようなクラブチームといったものはほとんどなかったので、小学校のサッカースポーツ少年団に入っていました。
兄が入ってたというのと、もともとサッカーが盛んな地域でしたから、自然な流れでサッカーを始めました。
小倉
僕の場合は、親父が野球派だったのでもともと野球をやってました。通っていた小学校にサッカーチームがあって、4年か5年生の時にサッカー部の先生が担任になったことで、最初は無理やりサッカーをやらされましたね。だから、6年生の時には野球とサッカーとどっちの試合に行けばいいかな?なんてかなり悩んだ覚えがあります。
当時は野球が盛んな時代でしたが、僕が育った所もサッカーが盛んな地域だったので、結局サッカーをやることになりました。

その頃からプロ選手とか、サッカーで食べていけたらいいな・・・と思うことはありました?

小倉
当時は日本代表が、とか、プロになって、というのはまったくイメージがありませんでしたね。
井原
テレビでもほとんどサッカーの試合をやっていませんですし・・・。単純にサッカーがうまくなりたいというのはありましたが、プロというのはまったく思いませんでしたね。当時の僕の将来の夢は体育の先生になればサッカーとも関わることができるので、学校の先生になろうと思ってましたから。

当時、ご両親や学校の先生や指導者からの応援やアドバイスはありましたか?

井原
父は毎回必ず試合は応援に来てくれていましたね。今思えば一番のサポーターでしたね。指導者からは高校に入るときにサッカーの強い学校を勧めてもらったり、教師を目指すのであれば○○大学を受けてみたら、といったアドバイスはしてくれました。
小倉
僕の場合は指導者の先生もそうですが、中学の時に一番仲が良かった友人のお兄さんがサッカーの強い高校へ行っていので僕も同じ高校へ行きました。いつもその友人のお兄さんと遊んでもらっていたので、その影響だったんでしょうね。

サッカーで選手、指導者として携わっていくんだ!ということを決めた「きっかけ」はどういったことでしたか?

小倉
僕の場合はドイツへ行ったことによる出会いがきっかけです。
余談ですが、当時は今みたいにテレビやネットでドイツに行かなくても試合が観れるという時代ではなかったですから。たぶん今のように現地に行かなくてもテレビやネットで観戦できるという状況だったら、僕の性格上、行ってなかったと思いますね(笑)
僕がドイツへ行って1年後、日本にもプロができるというのを知りました。それまでサッカー関係者がドイツに来るなんてことはなかったのですが、プロ設立ということで川淵さん(現・日本サッカー協会名誉会長)や岡田さん(元日本代表監督)などそうそうたるメンバーがドイツにプロリーグの勉強のため来られました。そこでの出会いがプロにかかわることになるきっかけでした。
その後日本に帰国してから、ジェフユナイテッド千葉での素晴らしい指導者との出会いと経験が、現在代表チームにかかわるまでの”きっかけ”となりました。ドイツにいた最初の1年までは、サッカー界なんてまったく関係ありませんでしたから、どこでそういう縁にめぐりあうかわからないものです。
井原
僕の場合は、とにかく、サッカーをやっていて楽しいというのが一番でしたし、上手くなりたい、強くなりたい、優勝したいという気持ちが幼い頃からありましたから、サッカーを辞めよう!などのネガティブな発想はまったくありませんでした。ただ、プロ選手というのがまったくイメージできていませんでしたから、最初は日本リーグでもやっていけるとも思ってませんでした。もしダメだったら教員試験を受けて先生やればいいか・・・くらいの感じでしたよ。それが大学、社会人からプロ、日本代表に選ばれて、「ひょっとしたら俺、サッカーでメシ食えるかもしれない」と思いはじめました。急にプロというのができたので、こっちもびっくりですよ。時代がめまぐるしく変わったみたいな感じでしたね。

困難を乗り越えるためには、ポジティブな発想への転換や気持ちの維持が重要!

それからお二人はそれぞれ、プロサッカー界で活躍されるわけですが、いずれもトップは非常に厳しい世界だと思います。強い気持ちを持ち続けるためには、やはり明確な目標があるからでしょうか?

小倉
目標というよりも、さっき井原君も言ってましたが、“楽しい”とか“やりたい”といった意欲がまず先だと思います。そのためには苦しい練習や先輩・後輩といった上下関係にも耐えなければならないので、まずは楽しくサッカーをやりたい、というところだと思います。その上で、試合に勝って優勝したいといったものが目標として出てくる。“楽しい”“やりたい”“勝ちたい”というポジティブな気持ちが、苦しさや厳しさをクリアしていける大事な要素のひとつと言えると思いますね。
井原
そうですね。ポジティブな発想に転換することは必要だと思いますね。本気で競技としてレベルアップしたければ、“楽しい”ことはほんの少ししかないと思います。毎日苦しい練習をして、まして試合に負けたりしたら辛いばかりです。でも、そういう中でもいかに“楽しい”ことを自分の中に見つけることができるか、逆にそういう辛さを乗り越えて結果が出たとき、充実感や楽しさの中にそれまでとは違う何かが出てくるような感覚を持てると、さらにレベルアップしていけるのではないでしょうか。
小倉
僕は代表チームに指導者として関わらせてもらっていますが、勝った時の称賛なんてほんの一瞬です。あとの9割は批判です。期待していただいている分、批判や非難があるわけですが、この勝利した一瞬の喜びや代表に選ばれた喜びといったことがあるから、批判・非難を乗り越えることができる。掲げる目標が大きくなればなるほど、困難も大きくなりますが、その困難を乗り越えたときの充実感は、やはりちょっと違うな・・というのを、特に今回のワールドカップ南アフリカ大会では強く感じましたね。
井原
そのほかにも目標を目指していく中で、どれだけ自分を犠牲にしてストイックにやれるかといった個人の部分と、指導者との関わりといった周りの環境の部分と両方がうまくリンクできたというのはあると思います。指導者をリスペクトして、その人の指導で自分自身を伸ばそうとできるかどうか。自分とは合わないところがあったとしても、いかに受け入れて理解しながら自分を伸ばしていこうと思えるかというのも、非常に大事だと思いますね。

~成長する選手というのは、取り組む姿勢が違う!

指導者という立場で、「この子は伸びるな」と思う指導者側の視点はどういったところですか?

小倉
僕は試合を見ていて、「この子は何か持ってるな」という感覚的なものがひとつ。
さらにもうひとつは、試合に負けてる時やチームがピンチの時に、どんなパフォーマンスができるか。プレーだけではなく気持ちの部分も含めてです。負けてる時でも、なんとかして勝ちたいという気持ちが全面に出ているかどうかというところを見てますね。試合に勝ってる時、チームの調子がいい時のパフォーマンスは、僕はあまりジャッジの参考にはしていませんね。
井原
「伸びるな!」というのは、基本的にある程度ポテンシャルもなければダメだと思いますが、能力がある程度あるならば、小倉さんがおっしゃるようにメンタルの部分ですよね。なんでも吸収して自分はうまくなるんだ、という意欲がないと絶対に伸びていかない。「オレは伸びたいんだ!という気持ちで、指導者のアドバイスを聴いて理解し、自分の頭で考えて実践しようというのが感じられる子は、すごく伸びていく可能性が高いと思います。
小倉
井原君も含めてですが、代表に選ばれたりする選手というのはみんな「僕は運が良かったです」と言うんですよね。僕はそれを聞いていて、「運」というのは特別な人だけがつかめるものではなくて、誰にでもつかめるチャンスは均等にあると思うんです。その「運」がめぐってきたときに、「運」を掴んでやる!という意志を持ってるかどうか、もしくはその時にチャンスを与えてやろうと指導者に思わせる自分かどうか。そういった心構えでいる選手が代表に選ばれてます。
先日、長友選手や長谷部選手の高校・大学の指導者の方と話す機会がありましたが、今回のワールドカップで彼らがあれほど活躍するとは思っていなかったそうです。ですが、今思い返すと彼らのサッカーに対する情熱は、当時からすごかったとおっしゃっていました。
また、井原君や中澤祐二選手、川口能活選手なんかは、代表監督が何度変わっても毎回選ばれてきますよね。彼らに言えるのは、技術ももちろんですがそれだけではなくて、サッカーに対する情熱や人を惹きつける力、努力する力は凄いものがあります!もちろん、サッカーへの取り組み姿勢も素晴らしいです!
井原
サッカーが大好きで、オレにはサッカーしかないみたいな感じで、誰よりも研究しながら努力して取り組んでいる子は、伸びる可能性がすごく高いですよね。

~ドリームサポーターとして、子供たちを応援したい!~

指導者でもあり父親でもあるお二人に、ご自身の子育てについてお聞かせください。

井原
うちはまだ3歳なので、幼いうちは色々なスポーツに触れ合う機会を与えてやりたいと思っています。まだ幼い今の段階では、とにかく誉めてあげて、楽しいと思わせたほうがいいと思うので、誉める以外は特に僕は口出ししません。今の時期には、誉めること、彼のやりたいことをいかに応援していくかが課題と思っています。
ですから、幼いうちに色々なスポーツに触れ合って、もう少し大きくなったら、自分がやりたいと思うスポーツをやってほしいですね。やはりスポーツはどの競技をやるにしても人間的にとても成長できると思いますから。
小倉
僕のところは4人いて一番上がサッカーやっていますが、サッカーをやってほしいなんて、これっぽっちも思ってませんでしたね。井原君も言ってましたが、自分のやりたいと思うものを自分で選んでやればいい。水泳でもピアノでもヴァイオリンでも、自分でやると決めたものをやってほしい。あとはチャンスがあれば、日本だけではなくて世界を見てほしいと思いますね。井原君もそうだと思いますが、サッカーに携わってから色んな国へ行く機会に恵まれました。そのおかげで、色んな国の人、文化に触れたことでたくさんの影響を受けたし勉強もさせてもらいました。もちろんいいことばかりではなくて、言葉が通じないとか泥棒にあったとか苦労もさんざんしましたけど、それも経験ですから・・(笑)。
井原
とにかく、子どもが自分で決めたことに対して、親はそれをサポートしてあげるだけですよね!結局最後は自分で進んでいかなければならないわけですから。だから、子どもが自分で自分の進む方向を見つけ出せるような、そのための環境作りに注意していかなくてはと思っています。自分も知らず知らずのうちに、廻りの環境に助けられてここまで来れたと思っていますので、自分でも環境作りに最大限の配慮をすべきと考えています。
小倉
「お父さん、これやりたい!」って、自分から言ってほしいですね。「水泳やりたい」でも「塾に行きたい」でも、基本的になんでもいいと思うんです。親としては、子どもがやりたいと思うものをやれるような環境を与えていかなくてはと思っています。ですから、意欲ある子供たちになって欲しいです。サッカー界の発展のために、大変必要なことと思っています。

対談後記

日本を代表するお二人の熱いお話は、長時間にも及びました。

今回のお話の中で、いかにポジティブに考え、それを維持する気持ちにいつでも感謝の気持ちを忘れない・・・それが、トップ選手の姿であり、それらを指導する立場として大変重要なことと感じました。これからの育成課題もここにあるとも感じることが出来ました。

「あすり~と先生.com」としても、素晴らしい講師陣の熱い気持ちをお伝えできるよう様々な形で、皆様にお伝えできればと思っております。

是非とも、素晴らしいお話を現場でお聞きくださればと思います。